ひらがなのふたり

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男の二人暮らしになんて、カラフルな爪楊枝は必要ないだろう。そう思ったゆきは、ちょっとだけ眉間に皺を寄せると、結局のところそれを、買い物かごのなかに抛り込んだ。なんと言ってもさなたはきっとこういうものが好きだろうし。前歯をせせるのにはいささかお上品にすぎるが、そもそもゆきやさなたの年代だと、そんなものは使わないか、使うとしても類似の高性能品(デンタルフロス)である。チーズとか、たこさんウインナーとか、ミートボールとかに「むだに」(とはもちろんゆきの思惑)刺して使う。そんな「むだ」にこころを配るのは、なんと言っても、ゆきが、さなたの喜ぶ顔が好きだから――などという言い方は、いささか簡にして要を得ていない。そうであるからこその「眉間の皺」である。
(「爪楊枝の色」より)


カテゴリ:
小説

収録作:

「爪楊枝の色」
「麻婆飯」
「ひらがなのふたり」
「大判焼小路」
「桜の下で男(もしくは男)」
「お茶を淹れる」
「未開の大地」
「春巻きの皮(すなわち、揚げるまえに包むもの)」
「スパイスの誘惑」
「気づいたら卵焼き」
「平行線」
「オーロラソース」
「古い油」
「木べらと青春」
「WATCHING A MOVIE WITH SOME SNACKS」
「ゆきあらし」
「突然炎のごとく」
「霙花」
「海・オンデマンド/花火・オンデマンド」

PDFページ数:
82p

仕様:
zip(pdf/epub/mobi/書影)

最終更新日:
2021年3月29日

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Size
4.09 MB
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