わがままストロベリー

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フォークを握る指先に、ぎゅっと力をこめていちごをつぶす。つぶす、つぶす、つぶす。いくつもいくつもつぶす。
さっきからもう、マッチをこすって出来た火みたいに甘くて苦しい香りがあとからあとから立ち上って、息もできない。においというのは見えない水のようなものだ。そうして、人間の気持ちというのは辞書のようなものであり、ひとつひとつは、そこから引きだしてくる単語の意味のようなもの、濡れてしまったらおじゃん、解読不能になる。だからもうわからない。わたしには、わたしの気持ちがわからない。
(「わがままストロベリー」より)

カテゴリ:
小説

収録作:
「わたしの入江」
「ペダル」
「命短し」
「パイプとランプ」
「はちみつしょうがのお湯割りを」
「かみさまたちの死後」
「彼女が言ったすべてのこと」
「すいかのたね(あの夏の日の黄身ちゃんと白身ちゃん)」
「わがままストロベリー」

PDFページ数:
51p

仕様:
zip(pdf/epub/mobi/書影)

最終更新日:
2021年5月2日

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2.62 MB
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